偽りの先生、幾千の涙

side by 海斗



兄さん、どうして今日は家に入れてくれないかな?


教員しながら、榎本果穂のことを調べるのが大変で、ちょっと疲れてる?


確かに俺も兄さんの作った晩ご飯でも食いたいって気持ちがあって毎回家に行ってるから、兄さんの危機管理能力が俺を家に入れるなと言ったのだろうか?


くだらない事を考えながら、俺は自宅に向かおうとした。


すると、どうだろう。


乗り換えの駅のホームで、この前見た可愛い女の子がいて、その子がスマホで誰かと話している。


国木田花音ちゃんだ。


あの子が敵なのか、味方なのかは知らないけど、敵だとしたら向こうの情報だけ引き出したらいいわけだし、味方になってくれそうなら榎本果穂側からこっちに来てもらえばいい話だよな。


なら話は簡単だ、お近づきになればいい。


どうせなら、可愛い女の子から話を聞く方が気分良いし。


俺は後ろから近付いたのだか、華奢な肩に手を置けなかった。


「え?
ママ、本当なの?
伊藤貴久って人、大学の卒業生の一覧にいないの?
いるけど、年齢層が違うって…うん、分かった。
ごめんね、心配かけちゃって。
また新しい事が分かったら、家でも電話でもいいから教えてね。
じゃあ、今から予備校に行くから、帰ったらまた教えてね。」


電話を切ると、国木田花音は改札口の方に向かって歩く。


思っていたよりも、事態は進んでいたようだ。


この子が兄さんの素性を調べている?


しかもママって…そういえば、この子の親って弁護士だっけ?


これはちょっと不味い事になってる?


< 115 / 294 >

この作品をシェア

pagetop