偽りの先生、幾千の涙


座っていたはずなのに、ソファに横たわっていて、体の上にはタオルケットが掛かっている。


伊藤がしてくれた?


そんな疑問を抱いていると、部屋の奥から声が聞こえる。


「起きた?」


朝の支度が殆ど終わっているらしい伊藤は、昨日と違うスーツを来ていて、眠そうな表情もせずにコーヒーを飲んでいる。


「…おはようございます。」


「おはよう。
今、6時半だけど、自分の家に戻る?
それとも学校サボっちゃう?」


時計を見ると、確かにそれぐらいの時間だ。


お弁当を作る時間はないけど、シャワーを浴びて、着替える時間ならある。


「サボりませんよ。
戻ります。
…泊めていただきありがとうございました。」


私は眠いながらも、しっかりと歩いて玄関まで向かう。


鍵を閉めるためか、私が何処かを覗かないためかは分からないけど、伊藤も後ろからついてくる。


「じゃあまた学校で。」


「…今日もよろしくお願いいたします。」


私は頭を下げると、部屋を出た。


そこから急いで自宅に戻り、シャワーを浴びた。


朝ご飯は抜いて、髪をセットして、日焼け止めを塗って、着替えて…準備が出来たのは、いつもよりも少し遅い時間だった。


< 184 / 294 >

この作品をシェア

pagetop