そばにいて


「甲田どうしたんだよ、今日は」

昼休み。

いつものように同期の中岡と昼食を社員食堂で摂っていて、俺がかけそばを啜っていると不意にそんなことを言われた。
前に座る中岡を見ると、苦笑いを浮かべていた。

「え、なにが?」

ズズズ。音を立てて啜る。
中岡は口に含んだエビフライをモグモグさせて飲み込むと口を開く。

「いや、今日鬼気迫るものがあるからさ」

「え?」

「目こ~んななってさ、」

箸を右手に持ったまま、両方の人差し指を天に突き上げるいわゆる目を吊り上げるようなジャスチャーをする。

「女のコたちも甲田に声が掛けにくいって言って、無駄に俺に仕事が回ってきたんだけど」

中岡が左の口角だけを器用に上げて少々不満げに訴える。

「あー。猫が朝調子悪くてさ……」

「へ?猫!?……あぁ、ミキちゃんか」

中岡は俺から自身の御膳に視線を移した。

「もう七年か」

「まだ七年だよ……」

「……そっか」

中岡はさみしそうに笑ってそれ以上は何も言わなかった。


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