オカンみたいな君が好き
「はあ、もう。お前だってばかだ」


トーマはため息混じりにそう言った。

まるで呟くようで、気を抜いていたら聞き漏らしていた。


「そういうのは俺に言わせてくれよな」

「何を言って……」


何を言っているの。

そう尋ねようとした私の唇に人差し指を当てて「聞いて」とトーマは低く細い声で言った。



「俺もお前が好き。

ずっと昔から、手のかかるお前のことが好き」



唇に当てられたトーマの指がそっと離れる。

私はその手をぎゅっと握ってまた涙を溢した。


「あーあー、そんなに泣くと明日目ぇ腫れるぞ」


小言をつきながらも優しく涙を拭いてくれるトーマ。

ほんと、どこのオカンだよって言いたくなる。

実際口うるさいし、いちいちダメ出ししてくるし、面倒見がいいというか世話焼きだし、過保護なところがあってオカンみたいだけど。


そんなきみが、私は大好きです。



Fin.

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