甘えたいお年頃。


午後七時半。
家に着くなり私は深月に二階の部屋まで連行された。


「深鶴これってどういうことかな!? 私なにかやらかしたのかな、里菜の事怒らせちゃったのかな!?」
「待って、落ち着いて、一体どうしたの」


広い部屋のつながった空間。
北側には私の机とベッド、南側には深月の机とベッドが置いてある。
これが私達の部屋だ。

深月はそのちょうどど真ん中のテーブルに座り直すと、スマホを操作して私に見せてきた。
マフラーを外してその辺に置き、向かい合うように腰を下ろす。
そこに表示されていたのは、里菜との個人チャットの画面だった。

『もう話しかけてこないで。うち、深月の友達じゃないから』

そのメッセージを最後に、相手にブロックされています、という表示がなされ、深月はメッセージを送ることが出来なくなっていた。


「うう……どうしてかなあ。私面と向かってひどいこと言ったっけ……親友になれたと思ったのに」


本気で悲しむ深月が痛々しくて目をそらす。
深月は送ることの出来ない謝罪の言葉を打ち続けていた。


「……深月」
「何?」
「今日、放課後に里菜さんと話したんだけど」


顔を上げてくれるが、私はその先の言葉が詰まって出てこない。


「……里菜、私のこと嫌いって?」
「……それだけじゃ、なくて……」
「もしかして、深鶴もひどいこと言われたの?」
「いや私はいいん」
「良くないよ!! 里菜は深鶴にまでひどいこと言ったの!? それは良くない!」


キッ、と私を睨むなり肩を掴んでくる。
あわてて話を戻し、私は里菜との一連の会話を深月に話した。


「そんな……」


全てを聞いた深月は、まさに顔面蒼白と言えるくらいにショックを受けている。
無理もない。
友人に罵倒されてヘラヘラ笑えるわけがないだろう。
……と、思っていたのだが。


「それほとんど……なんだっけ、尊? って人のせいじゃん!!」
「へ?」
「尊がチクらなかったら怒らなかったって事でしょ? ……まあ、ああいうこと言った私も悪いけどさ! なんで里菜はそんな奴の方を信用するの? 意味わかんない!」


しかも深鶴まで嫌われた、と怒りを露わにしている。
さっきまでの真っ青な顔はどこへやら。
ぽかんとしていると、深月はゆっくり立ち上がった。


「ちょっとどこ行くの?」
「里菜の家に電話かける!」
「はあ!?」
「ちゃんと話し合ってくるから!! あ、今日の晩ご飯焼きそばだって。そんじゃ!」


ビシッと敬礼をキメて、深月は階段を駆けていく。
と同時に、私のお腹の音が鳴った。


「……まあ、いいか」


私は制服をハンガーに掛け、部屋着に着替えてリビングに降りていった。

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