甘えたいお年頃。


キッチンでは母が食器を洗っている。
私の姿を発見すると、母は手を止めた。


「あらお帰り。焼きそば盛ったげるから食べて」
「うん、ありがとう」
「深鶴今日遅かったけどどうしたの?」
「あー……ちょっと、いろいろあって」


大変ねえ、と言いながら母は食卓に多めに盛った焼きそばを出してくれた。
座っていざ食べようとした時、廊下から深月の大声が聞こえる。
どうやら里菜と完全にこじれているようだ。

ため息をついた私に、母は心配そうな顔を向けた。


「友達と何かあったのね……」
「まあね……遅くなったのもそのせいだし」
「深月と深鶴に共通のお友達なんていたっけ?」


この間の誕生日パーティの、と言うとなんとなく理解してくれたらしい。
焼きそばの三分の一を食べ終えた頃、深月は足音を立てながら乱暴に電話を受話器に戻した。


「ちょっと深月、物は丁寧に扱いなさい」
「……おかあさ~ん……もうやだぁ~」
「何よもう……泣かないの、ね?」


その場でボロボロと泣き始める深月を、母は「大丈夫よ」と慰めながら頭を撫でている。

そういえば、とふと思い出してしまった。
私も尚人に頭を撫でられたんだっけ。
里菜の話で吹っ飛んでいた記憶が蘇る。

その事に赤くなるよりも前に、私は大事なことを思い出した。


「あっ……小論文出してない……」


…………………………


今日はいろいろありすぎた。
私は寝る支度を済ませ、ベッドの上でスマホを弄っている。
さっきまで泣きべそをかいていた深月は、いつの間にか眠っていた。

突然、ピロンと通知音が鳴る。
開いてみると、『追加していないユーザーです』という表示と共に、またメッセージが入っていた。

『俺』

いや誰だよ。


『どちら様?』

『霜月尚人』


え、と声が漏れる。
口を塞いで、あわてて深月の方を見るが、深月はしっかり眠っていた。

『なんでLINE知ってるの』

『聞いた』

『誰に』

『お前の連絡先知ってる人』

いや誰だ。
二回も同じこと思っちゃったじゃないか。
連絡先を知ってる人に心当たりがない。

『追加してください』

『分かった』

突然の敬語。
いつものボソボソとした話し方よりも新鮮だ。
何か他にも返信しようとしたが、時計はすでに12時を回っている。

私はそのまま、スマホを充電器に挿して眠った。

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