戸惑う暇もないくらい
唇を離した頃にはお互いに息が上がっていた。
鼻先が付きそうな距離で互いだけを見つめ合う。

「那智…好きなの…」

自分からは滅多に言わない言葉を口にする。
恥ずかしいよりも、今は伝えたかった。

驚いた那智の目が丸く見開かれる。

「私、那智がいないとだめ。離れて欲しくない…ずっと、傍にいて」
「葉月…っ」

身体に回された腕に力が入り、噛みつくようなキスが落とされる。
性急で荒々しい那智の口づけは求められてるんだと感じられてそれが気持ち良さに繋がっていく。

じんわり身体に熱が灯され、唇が離れてそっと目を開けると欲を浮かべた那智の瞳に視線がぶつかり、身体が疼いた。

「那智…」

『ベッドに行きたい』

「っ…」
「きゃ…っ」

さすがに恥ずかしくて背伸びをするように那智の耳元でそっと囁くと、その瞬間抱き上げるように横に持ち上げられ、そのまま那智は無言で寝室へと向かった。

ベッドに下ろされて那智がすぐに私の上に跨がるように乗っかかる。
煩わしいとでも言いたげに身に付ける衣服を脱いで獣のような目で私を見下ろした。

「ごめん、余裕ない…っ」

そう言うとスーツに掛かった手が乱暴にボタンを外し、白いシャツとキャミソールは裾から一気に間繰り上げられた。
同時に体温の上がった那智の熱い手のひらが身体を這うように滑り込む。

「あ…っ」

背中に回った手がホックを外し、下着もぐっと持ち上げられて素肌を晒す。
噛みつくように敏感な部分に那智の唇が寄せられ、強い刺激に背中を浮かせるように仰け反らせた。

「んん…っ」

下のスカートに滑り込んだ手がストッキングの履き口からずり下ろし、一緒に下着が下ろされると無意識に脚が閉じる。

「葉月、だめ。隠さないで」
「だって…っ」

ほとんど衣服を身につけたまま、隠すべきところだけが晒されている羞恥と心許ない感覚が身体の感度を上げていき、普通に触れられる那智の手にも大袈裟なほどびくりと反応した。

「葉月、俺手加減できない…っ」
「うん…いいよ…」

両手を伸ばして求めるように伝えると脚を持ち上げた那智が本能のままに動き出した。

「っ」
「あぁ…っ!」

脳まで痺れるような気持ち良さに堪らず、身体を折った那智の首筋にしがみつくように腕を回した。

「那智…っん、はぁ…っ」
「ふ、葉月…っ」

繋がることで身体と心に幸せが満ちていく。
この一週間の不安や後悔や寂しさを塗り替えるように激しく求め合う。

愛しくて、大好きで、大好きで、仕方ない。

もう二度と、離れたくない。離したくない。

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