強引年下ピアニストと恋するカクテル。

「さあ。それより、デザートビュッフェがもうすぐ始まるんだ。皆に行き渡るように大量に注文したから、食べてほしい」
「デザートビュッフェなんて素敵。行く行く」
「そうだ。副店長も美緒が戻らないから心配してたよ。あと帰りは送るから時間も気にしないで今日は楽しんで」
「うん! ありがとう。颯太くん。なんか急に飲みたくなっちゃったから、お言葉に甘えさせてもらうね」
するりと話をすり替えられたことも忘れ、私は颯太くんと一緒にBARに戻る。

テーブルに並べられたケーキを、バーテンダーが一個一個取ってくれてケーキにあうカクテルを用意してくれる。
カクテルにケーキがあうのかと疑問に思いつつも、甘いケーキとさっぱりしたカクテルはばっちりだった。

その後、世界中のチーズを集めたとこれまた一口大のチーズとクラッカーが用意され、ほろ酔い気分で味わった。
私はケーキやチーズにパクつきながら彼について考えるのを止めた。

彼が壊したムードも、ケーキやデザートが運ばれてくる頃にはすっかり修復していた。
なので、そのムードを壊さないように誰にも彼の意味深な発言の意味を聞くことが出来なかった。
けれど、思い出しても変な動機や眩暈が起きてしまうので、私も忘れてケーキを口に次々に放りこみ、記憶の片隅へと追いやったのだった。


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