強引年下ピアニストと恋するカクテル。
揺れるカクテル



(ふー。今日は遅くなっちゃった)
子ども達の進級試験がもう一週間後に迫っていた。
子ども達も緊張しているのは勿論なのだけれど、一部の保護者の熱の入れようも強烈だ。
この進級試験での成果によってクラス分けも行われるから仕方ないのだけど。
私は高学年の子のレッスンもあるけど、メインは低学年の子ども達。
高学年になると有名な先生や実力ある先生に指導してもらえるよう、今からアピールをし出した保護者もいる。
四月からレッスンを受け持つ低学年の保護者は、熱心な人が多く、今日も後ろでレッスンの見学をしていった。
(そうは分かっていてもハードだあ)
(レッスン後にレッスン料を払うのでさらに一時間プラスして練習してほしいとか……。担当の先生じゃなくてもこの際いいとか、自主連に教室を貸して欲しいとか)
きつそうで今にも泣き出しそうな子ども達の顔が浮かんで辛くなる。
最初からあんな風に飛ばさなくても良いのに。
(ダメ。私まで暗い気持ちになっちゃ駄目だ)

事務所にタイムカードを押しに向かいながらも、疲れやもやもやは吹き飛ばない。
(そうだ。数日ぶりに颯太くんのお店に顔を出してみよう!)
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