強引同期に愛されまして。
1.思えばなんでこんな男に

ウェディングベルと言うものは、聞く人によって響き方が全然違うと私は思う。

広い敷地を囲うように塀が巡らされ、オリーブの木が植えられた庭には、ウエディングベルと呼ばれる、ひもを引っ張ると鳴るタイプのスイングベルがある。

チャペルに披露宴会場、ブライダルサロンからドレスサロンに写真スタジオまで備えたこの一体型の結婚式場は、訪れた人にまるで異国の地に紛れ込んだ感覚さえ与えてくれると人気だ。


今日は会社の後輩である岩田美波(いわた みなみ)さんの結婚式。幸せそうなふたりに見送られて披露宴会場を出ると、ガラス窓の向こうでは見知らぬカップルがウエディングベルを鳴らしていた。

後輩が鳴らしていた時は、素直におめでとうと思えたけれど、まったくの他人の幸せそうな顔はあまり楽しくない。ええい、認めてしまおうか。はっきり言えば面白くない。内心、あー幸せそうで結構ですねーって思いっきりひがんでいる。


大学を卒業し、入社して仕事を覚えて、……結婚なんてまだまだ先なんだって思っていた。
思ったまま何年も過ぎ、私はついこの間三十歳になった。それでも、まだ先なんだと思う自分がいる。

結婚願望はないわけじゃない。いつかは……という漠然とした未来像はある。でもそれを具体的にいつ? と聞かれたらきっと私は答えられない。


時間なんて止まればいいのになぁ。

なのに、出産すること考えたら早いほうがいいよ、なんてみんな言う。
男はいいよなぁ。子供欲しけりゃ若い女の子を捕まえればいいんだもの。

男女同権も叫ばれて久しい。決して女だからと不遇された覚えはないし、女で良かったと思うこともいっぱいあるけれど、正直この年の女でいることは一番苦しい。

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