強引同期に愛されまして。
「前は、彼に追いつきたかったし、いろいろ必死でしたけど。ちょっと落ち着きましたね。結婚ってそういう意味では安定剤の役割があるのかもしれないです」
予想外なことを言われて、思わずマジマジと彼女を見つめてしまう。彼女の手には、仕事の邪魔にならないようなシンプルな銀色のリングが勝ち誇るように収まっている。
初音は、初の女性のヘルプデスク要員として、優先的に研修を受けさせられ、育てられた。
女性の職場進出が主流になったとはいえ、そこでバリバリやっていこうと思えば、求められるのは男並みの気の強さであり、彼女にはそれがあったということなのだろう。
だけど、期待にこたえようとすればどうしたって無理は出る。抱え込むなというけれど、抱え込まなければやってられないくらい、私たちのような女性は追い詰められているのだ。
昔は、初音にもその傾向が強かった。だからこそ私たちは共感しあったし、助け合っても来た。
その彼女が、こんなことを言うなんて驚きだ。
「田中さんはちょっと無理難題を言いすぎなんです。時にははっきり無理だといったほうが今後のためですよ」
「でも放っておけないしね。今日の十六時から相談したいって言われたの。もし可能なら初音も入ってくれれば助かるんだけど」
「田中さんからオファーがあれば」
初音はきっぱりとそう言った。以前ならば、私からのお願いにノーとは言わなかったのに。
でも落ち着いて考えれば、彼女の言っていることは筋が通っている。一番お客に寄り添う立場である営業が、客の不安を解消するために他の部署を仕切らなければならないのだ。田中くん本人にその自覚を持たせる必要はある。
この条件を言い出せることは間違いなく彼女が経験を積んだことを意味する。謝らない男の影響かな。すごいな。