鎖骨を噛む





味のしないパスタとパンを食べて、それからアパートに帰った。ムルソーさんからの返事はなかった。多分、まだ14:00過ぎだからかもしれない。ムルソーさんが来るとしたら、17:00から21:00の間だ。



ということは、もし、17:00から押入れの中に隠れて待っていたら、ムルソーさんに会えるかもしれないってことだ。



待ってみようか……いやでも、そんなことを果たしてムルソーさんは、望んでいるのだろうか……。



私はムルソーさんに会いたい。会って、友達になりたいと思っている。でも、敢えて会わない方がいい気もする。ムルソーさんがどういう人か、頭の中で想像して、楽しむ。そっちの方が、ドキドキ、ワクワクが大きいし、ロマンチックじゃないかしら。



それに、ムルソーさんは、まだ私のことを信じられないと言っていた。もしかしたら、私に通報される可能性を潰すために、私を殺しに来るかもしれない。



まずは、信用を積むこと。そして、積まれた信用が信頼に変わった時、初めて面と向かって「初めまして。」を言う。これ、いい! 興あるロマンスって感じ!



なら、なるべく家にいない方がいいかもしれない。私は、再び財布を持って、鍵を開けたまま、外へ出た。




< 42 / 148 >

この作品をシェア

pagetop