世子様に見初められて~十年越しの恋慕


ダヨンは景福宮の配置を紙に照らし合わせ、文字が書かれている辺りの場所が何処なのか?思い出しながら紙に書き出してみる。

「この、左上の辺りの場所は泰元殿(テウォンジョン:御真影を祀る場所)で、国葬が行われるまでの期間、王様と王妃様の棺を安置する場所でもあります」
「祀堂というわけね」
「この辺りは集玉斎(ジボクジェ:書斎)でしょうか?」

ダヨンは残り一つの文字を見つめ手が止まった。

「これは西門にあたる迎秋門(ヨンチュムン)ですね。文武百官が出入りする門です」
「なるほど。きっと意味があるわね」

ソウォンはダヨンが書き出した紙を手にして脳内を整理し始める。
けれど、思うように進まない。

「部屋に持ち帰って考えてみます」
「分かりました。では、戻る手配をしますね」

ダヨンは部屋の外で待つシビに指示を出し、送り届ける女官を手配した。
紙を袂に隠し、咸和堂へ戻る途中、資善堂の南門を出た、その時。
建春門(コンチュンムン:東の正門)の方から見覚えのある武官がこちらへ向かってくる。
すかさず前の女官の背後に隠れ、顔を伏せて挨拶する。
横を通り過ぎて思い出す。
世子様の護衛で見た事がある人だ。

建春門は世子様の居所がある東宮のすぐ東に位置しているから、王族関係の人が出入りする門だと聞いた事がある。
ソウォンは足早にその場を後にした。


※ ※ ※


「智妃様の所にいる間者に勘付かれたかもしれないから、今夜は見張りを多めに」
「分かりました」

ダヨンは咸和堂周辺に護衛を配置させ、念の為に王様に報告をしに向かう。


執務室で政務をのこなす王に、複写しておいた紙を王に手渡す。

「泰元殿、集玉斎、迎秋門に、何か関連がおありですか?」
「集玉斎は王の書斎の為、他の者は入れない」

王は記憶を辿り、三十年余り前の出来事を思い出す。





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