青野君の犬になりたい
なのにコンパ当日、幹事のはずの英子と彼はいなかった。
彼がインフルエンザにかかって英子はその看病ということで2人揃って不参加となった。
週末の夜、指定された居酒屋に行くと男性2人と女性2人が集まっていて、すでに和やかに会話が始まっていた。
男性陣は全員、英子の彼の大学時代の友人ということだ。
女性の方は英子の会社の同僚が2人。英子が来ないとなると自分だけ初対面の人ばかりで気が引けた。
「おっせーな、あいつ」「ずっとダダこねてたからもしやドタキャンとかないよな」と、彼らがぼそぼそ言う声が聞こえたかのように、「どうも」と最後のひとりが登場した。
「えっ!」
ボサボサの髪に黒メガネをかけた青野君が立っていた。
どうして? 青野君と英子の彼って友だちだったの? という驚きと、こんなシチュエーションで出くわしてしまったという気まずさで、やっぱり参加するんじゃなかったと強く後悔する。
青野君は私を見てやはり驚いた顔をしたが、すぐにいつものポーカーフェースに戻った。
言葉をかけてこないので、初対面というスタンスでいくのだなと暗黙の了解をする。
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