青野君の犬になりたい
「あれ? いない」
まさか出発する前から離れ離れ?
焦って立ち止まりながらくるくるきょろきょろしていると、後方から「七海」と声がした。
振りかえると青野君が近づいてきた。
黒いダッフルコートに赤いマフラー。こんなに目立つのに見失うなんて。
「もう、子供みたいにすぐ迷子になるんだから。姫子はリードなしでも迷わずついてくるのになあ。やっぱり七海には首輪とリードが必要かもね。はい、リードの代わり」
差し出された手をそっとつないで歩き出す。
「だって人が多すぎるんだもの」
ブツブツ言い訳をする私を、隣に並んで歩く青野君がクスクス笑う。
そして立ち止まり、「七海」とまた呼ぶので振り向くと、柔らかい唇が降りてきた。
「すねた横顔が可愛いからキスしたくなった」
茶色い瞳が私を覗き込む。
そして恥ずかしくて俯いた私の頬にもキスをして、耳元で囁く。
「抱きたいな」
ドキッとして頬を熱くしながら青野君を見上げると、青野君は笑って再び私の手を引き、「行こう」とゲートに向かって歩き出す。

青野君に手を引かれ、私は思う。
首輪でつながれてもかまわない。
青野君に愛されるなら、青野君の犬になりたいと。


―― 完 ――

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