青野君の犬になりたい
「それで、まさか4番目の彼女になったわけじゃないよね」
10年来の親友、英子がアイスカフェラテのグラスをテーブルの上で、
まるでワインのようにクルクル回す。
話が理解できない、というときに彼女がみせる癖のひとつだ。
土曜の昼間、私たちは一緒に映画を見た後に日比谷のカフェでお茶を飲んでいた。
青野君の話をするうちに英子の表情はどんどんきつくなっていった。
シャープな顔立ちの英子は、眉をひそめただけで、
彼女が実際に感じている1.5倍くらいの不快感を伝える迫力がある。
「そのまさかになった」というと、回っていた彼女のグラスが止まった。
バッカじゃない! 
言葉よりも先に、言葉よりも強く、瞳が語ってくる。
「だいたい4番目ってどういうことよ」
「青野君はもう3人彼女がいるってこと」
「だからさ、なんで3股してるわけ? で、さらに4股目の彼女になるってどういうことよ」
英子の小ぶりで形のよい鼻が膨らんだ。
これは彼女が憤っているときの合図だ。
私だってなんでこんなことになったのか、わからない。

私はその小鼻に目をやりながら、私は青野君とのやりとりを語って聞かせた。
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