【短編】バレンタインのお返しに。
べつに、恥ずかしがって付き合い出したことを隠さなくてもいいのに。
余計惨めになるだけだっつーの。
と、八つ当たりをしたところで、今日は夕飯を食べる気にもなれず、身近にあったクッキーを口に運び、そのままベッドに横になる。
なんで、瀬戸内先輩を好きになったんだろう。
なんで、瀬戸内先輩がわたしの指導係なんだろう。
瀬戸内先輩となんて、出逢わなきゃこんな辛い想いしなくて済んだのに。
「あー……」
なにも言葉が出てこなくて、うとうとし出したその瞬間、ピンポーン、と家のチャイムが鳴った。
誰だ、ひとが感傷に浸っているときに陽気に訪ねてくるのは。
「はあい」