西城家の花




そもそも、何故美桜が大志のような筋肉質の男性を好むのかというと、それは彼女の二人の兄たちが主な原因であった





美桜には歳が4つ離れた一番目の兄と、その兄と年子の二番目の兄がいるのだが、この二人がまぁなんというかとてつもなく体が弱いのだ





一番目の兄は生まれたころから元々体が丈夫ではなく、少し軽く動いただけで息切れし、酷いときは次の日まで寝込むということも既に日常茶飯事だ





二番目の兄は一番目の兄より幾分かマシなのだが、喘息持ちでこちらも常に体を安静にさせなければいけない状態だ





常に床に臥せっている兄たちが武道など出来るはずもなく、彼らのすることといったらもっぱら俳句の唄い合いや絵画の品評会など、どこぞの令嬢たちがするような遊びばっかり





そんな兄たちをずっと傍らで見ていた美桜が男らしい男性に夢見るのも不思議ではなかった





しかし、つい数年前まで婚約者がいた美桜はひたすらその想いをひた隠し続けた結果、彼女の理想が極限にまで膨らみ、大志のような男性にしか胸がときめなかいようになってしまったのだ





だから大志に出会えたということは美桜にとっては運命なのだ







「大志様…」






愛しの人の名前を口にしただけで胸がいっぱいいっぱいになる





今日は顔を合わせただけで、しかも美桜が興奮で倒れてしまったせいであまり一緒にいられなかったことが少しだけ悲しい





けれど、大志とは夫婦になるのだから、これからは毎日あのたくましい筋肉を眺めていられる、あの凛々しい顔を見つめていられる





自分はなんて幸せ者なのだろうか!!





妄想を全開にさせた美桜はきゃーと奇声をあげながら寝具の上でごろごろと悶えまくっていた







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