スイーツ王子と恋するレシピ
渋谷シカオこと、山田鹿夫は語り出した。


 中学校の文化祭で開催された「パティシエ選手権」でオレたちは決勝に残った。
 そして、最終決戦、副生徒会長の白鳥さんの最後の1票がどちらに入るかで優勝が決まる、というそのとき。

「どちらも同じくらいおいしかったから、選べない…だけど」
 白鳥さんはそう言いながら天見のケーキに1票を入れた。オレは負けた。
「天見君の方が顔が好みなので」
 
 顔で!?

 あこがれていた白鳥さんに選ばれなかっただけではなく、天見、おまえはそのあと
「顔で勝ったなんて嬉しくねーな!」などとほざきやがった!

 そしてあれからオレはおまえと再び戦う日のために、ケーキ作りの腕を磨くことはもちろんのこと、見た目も勝てるように努力した。


「…そうか。そうだったのか」
 恵斗さんは半ばあきれたようにそう言った。
 中学生の頃の出来事を、いまだに根にもっているなんて、なんて執念深いんだろう、この人。
 …でも、人ってそういうものなのかもしれない。特に何かを成し遂げようとする人にとって、中学生の時の悔しい出来事は原動力になるのだろう。
 彼の気持ち、わからなくはない。
 だけど、だけど…。

「努力は認めるよ。だけど、悪魔のショコラロールケーキを売るのはやめろ!」

「やだね! オレと勝負しろ! ケーキ対決だ!!」

 ケーキ対決ー!?



< 18 / 46 >

この作品をシェア

pagetop