スイーツ王子と恋するレシピ
第1部最終話・私のスイーツ王子様
  ふわふわのスポンジケーキと

 甘さを抑えた優しい味の生クリームに包まれて

 私は苺になってしまったようだ。

 かじると甘酸っぱい果汁がじゅわっとあふれ出す

 私は苺。

 恵斗さん、あなたの手で私は美味しいスイーツの一部になってしまったみたい。


 ……ハッ!!

 夢? あれ? ここ、どこ?

私は気を失って倒れてしまったようだ。そして今は、温かいベッドの中にいる。

「いつの間に……」

ぼんやりと霧がかかったような頭を覚まそうと、目をぱちぱちさせ、きょろきょろと辺りを見回した。

こ、ここは、もしかして!!

ガチャリと扉が開いた。

「気がついたか?」

け、け、け恵斗さん!!
ここは、恵斗さんの部屋!? 恵斗さんのベッド!?

「徹夜でがんばってくれたもんな。お疲れさま」

恵斗さんの手には、クリームがたっぷり乗ったホットチョコレートが。

「ホラ、これ、飲めよ。両手が使えないからこんなもんしかできないけど」

「こ、これ、私のために!?」

感動で涙が出そうだった。一口飲んだだけで、とろけるような甘さが私を包む。
疲れが一気に吹き飛んだ。

「でも、恵斗さんだって、徹夜で全然休んでないでしょ」

「俺は平気。ぶっ倒れたブタコを片手でここまで運ぶことだってできたんだぜ」

「えっ!!」
そ、そっか、私を運んでくれたんだ……。
私は恥ずかしくて真っ赤になった。

「すみません、お、重かったですよね」

「……ん」
恵斗さんも、頬が赤くなっているように見えた。

「恵斗さん?」
恵斗さんの顔が私のすぐ目の前に! そして……


 ちゅっ


 !?



 え? え? どういうこと!? 恵斗さんが、私に、


 キスした!!??



「え、あ、あの、」
私はパニックで心臓がぶっ潰れそうだった。


「ブタ……じゃなくて、ココ」

「は、はい!」

「俺、お前のこと」


 どきん。


「好きになった…かも」


 どきん。どきん。どきん。


ま、まじですか!?

そしてもう一度、優しくキス。

甘すぎて、中毒になっちゃうよ。恵斗さんのキス。

キスのあと、恵斗さんの手はぼんやりとしたままの私の頭を優しく撫で、そのあと、私の背中に、そしてだんだん、その下に……。

ちょ、ちょっと、待って、いきなり! そんな! きゃあ!!


「ウエスト、太いな」

 は!?


「ダイエットしろよ」


 ガーン!!!!

過去のトラウマを乗り越えて、心が癒された恵斗さん……だけど、毒舌はそのまま、相変わらず治らないみたい。

だけど、

「これからも、よろしくな、ココ」

そう言って笑った恵斗さんの笑顔は、どのスイーツよりも甘くて。

「はい! こちらこそ、よろしくお願いします!」

見習いとしても、カノジョとしても。


あなたの隣で修業させてください。

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