貴方が手をつないでくれるなら
日向が洩らす息、触れる度甘く熱くなった。しっとりと肌も吸い付いて…。
はぁ、だけど、まだ辛いかも知れない。…もっと後にするか。
何も今日強引に最後までする必要は全然無い。
俺は女じゃ無いから、初めての痛みなんてモノがどれ程のモノなのか解らない。
痛みに個人差はあるだろうが、男の愛し方にだってよるだろう。
ただ痛いだけだったなんて事には、なるべくならしたくない。誰かに聞いておけば良かったかな…。
何をどう聞くんだ…。
「日向、ここまでで止めておくか?またにしようか?」
止めようかなんて、聞く事では無い。こんな状態にまでしておいて、今更だよな。
「…はぁ、…いつかは…一度は通らなきゃいけない道です」
ゆっくりと首を振っている。確かに。まさに文字通り、…その通りだ。
こうなっては、もうムードもへったくれも無いな。
「はぁ…柏木さん。私…いいですよって言いました。それって、…結構勇気のいる事なんです…」
…はぁ、…俺という奴は。日向に本気であればある程、何故弱気になるんだろうか。
俺はこんな弱気な奴じゃなかったはずなんだ。どちらかと言えばいつだって強引に…だな。
日向にここまで言わせて。これでは…ただ弄って惑わせて、…悩ませているだけの、情けない奴じゃないか…はぁ。
俺の方こそ、真剣だからこそ、ビビりまくってんじゃないのか?
…ん?…日、向…。
俺の顔を両手で包んで引き寄せた。唇が軽く触れた。
日向…。
俺はドクンと大きく脈打った。
「こんな…子供みたいなキスしか出来なくて…ごめんなさい…何も…考えないで?…して」
はぁ…日向。こんな最高な誘惑ってあるか…。煽ってくれてるのか。…しっかりしろって、か。
「…日向」
日向の唇に触れた。日向がまた触れる。
唇を重ね、絡め…食み、続けた。…はぁ、心臓が…躍る。激しく高鳴る。…滾る。
「ん、日向。痛かったらごめん。でも…よくなるから」
頬に触れ髪を梳いた。
「クスッ。…大丈夫です。殺人的に痛くても…柏木さんの事、嫌いになったりしませんから」
柏木さんなら大丈夫…心配ない、…大丈夫よ。
…そうか、俺の弱気は、する事で日向に嫌われやしないかって事が根っこにあるからなんだな。最初の下品な言葉…。辛い経験のあるそれを正に日向にするからだ。
「…初めてなんだ、俺も」
「…え?…嘘、です、そんなの…どうしてそんな嘘…」
「…嘘じゃない。初めての女性とするのは、初めてなんだ」
あ、…そういう意味で。
「日向…、腕を…首に回してくれるか」
「…はい。…こう?」
恥ずかしそうに手を肩に掛け、ゆっくり腕を回した。身体がぐっと密着した。
「ん。しっかり抱き着いててくれ。離すなよ?俺の身体、どこにいくらでも傷つけて構わないから。…いいか?…力…抜いて…」
「…柏木さん。…あっ」
あ、…。唇、また…塞がれた。……あっ。ん…。んん。…んん゙…痛、い、か、も…ん゙ん。んんん…。
「…日向?…大丈夫か?」
「…大丈夫じゃない…痛いです…思ってたよりずっと痛いー」
ギュッと抱き着いてきた。
「あ。フ。ごめん。笑うところじゃないな。だけど、日向の言い方が面白くてごめん。…これだけで痛いか…」
無邪気だなぁ、本当…。
「まだだぞ?まだ全部じゃない…」
…キツイ。
「はぁ…、え゙ー?…まだぁ?」
「フ、ま、だ。…まだ全然途中だ。もう少し、しっかり抱き着いててくれ」
「はい…ぁ…」