【短編】ファースト・キスはあなたの部屋で
翔真は、ゆっくりとベッドにもたれていた体を起こしてから、座ったまま私の方に向かってきて、私のそばに置いてあったリモコンを手に持った。
「テレビ、見ないなら消すよ」
「うん」
翔真が近い。
いつもと変わらない距離感なはずなのに。
すごく近い気がして。
体中が熱くなってきて。
リモコンを持ったテレビに向けられた腕とか。
白いシャツとか。
首筋とかが。
いちいち気になって、私は目を泳がせる。
女々しいくせに。
頼りないくせに。
大人の階段を確実に登っていく翔真が憎くて。
「…翔真は?」
「は?」
「…したいとか思わないの?」
あなたは年頃の男の子で。
目の前にいる私は、年頃の女の子で。