名前で呼べよ。〜幼なじみに恋をして〜【番外編】
卒業式の日。


式が終わって、教室で先生のお話も、友達との寄せ書きの書き合いも終わって、写真もたくさんたくさん撮って。


卒業証書を握りしめながら、わたしはぐずぐず泣いていた。


「佐藤さん」


隣に長い影が落ちる。


「……さと、くん」


振り向いたわたしに、ふはっ、と笑い声が降ってきた。


「泣きすぎ」

「ひどい……!」


久しぶりに話せたと思ったのに、笑うってひどいよ。ひどすぎだよ。


鼻声で抗議してふくれたわたしに、全然泣いていないそうちゃんは、若干笑いを引っ込めた。


「ごめんごめん」


でも、まだ肩が震えている。


「ひどい顔だから見ないで」

「はいはい」

「みーなーいーでー!」


むすりと顔をそむければ、仕方ないな、というように。


「泣き虫」


知ってたけど、と言いながら真っ直ぐ前を見て、そうちゃんは半歩ぶん前に並んだ。


いつも通りに隣ではないのは、いざとなったらそうちゃんの背中にわたしが隠れられるようにだろう。

誰か来たときとか。


鏡を見ていないから分からないけど、鼻は痛いし、目も重い。


そうちゃんに気を使わせてしまうほど、わたしは本当にひどい顔をしているらしかった。
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