名前で呼べよ。〜幼なじみに恋をして〜【番外編】
しばらく無言で歩く。


涙はようやく止まったけど、ああ、本当に目が重い。

絶対腫れるよ、これ。


家に着いたら急いで冷やさなきゃ……。


明日がお休みなのが、せめてもの幸いだ。


ひっくひっくしゃくり上げたり、鼻を鳴らしたりしていたのが止まったからだろう。


そうちゃんはこちらを見ないようにしつつ、ほんの少し後ろに目線を寄越した。


「佐藤さん」

「ゔん」


……ものすごい鼻声が出た。


ひどい。これはひどい。


うわあうわあ、と心中焦りつつ、気にしていないふりをする。


「……あのさ」

「……うん」

「あの、さ」

「うん」

「第二ボタンとか、いる?」


へ、と間抜けな声がもれた。


そうちゃんの学ランの。

上から二番目の。

金色の、ボタン。


見慣れたそれは、きっと、引く手数多の。
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