一之瀬さんちの家政婦君

飛鳥は顔の下半分を隠すようにマスクを装着した。

素顔をなるべく晒さない為の対策だった。

性別を偽らなければならない訳は未だ不明。

“ピンポン”とインターホンが鳴ると、コックが待つ玄関に向かう。


“061228”


玄関の施錠を解除するパスワードを入力する。

出勤前、一之瀬さんがメモを残してくれていた。


少しは信頼してくれてるって事かな……


そうでも思わなければやっていけない。

ドアを開けた先に満面の笑みで「こんばんは!」と挨拶するコックがいる。

飛鳥も「こんばんは!」と会釈した。

そして、出来たての料理をワゴンごと受け取る。

「配達ご苦労様」

そう労った後、一之瀬さんから預かっていたチップをコックに手渡した。

「ありがとうございます!またお願いします!」

コックは深々とお辞儀すると部屋を後にした。

飛鳥はコックを見送って、料理をキッチンに運び込んだ。
< 17 / 151 >

この作品をシェア

pagetop