嘘は取り消せない











酷く長い悪夢だった
悪夢と言っても俺が死んだ訳では無い
大切な人が死ぬ夢
それを客観的に見てるもの
しかも何故か男の人の過去が俺に
似てたような気もする
ほかの人の気持ちも覗けて…………
自分は夢の世界には存在していなかった
いや、ほかの夢でも自分が第3者視点の時は
あるけど………

だけどほかの夢とは違う
ほかの夢は目覚めれば夢だと気づくけど
今回の夢は妙にリアルだった

大切な人が消えていく夢か………………

「あ、起きたの?」
彼女が顔をのぞき込む
それをお構い無しに自分の思考の世界に入る

夢の中の人たちって誰だったっけ?
知ってる人に見えたけど、思い出せない
夢の内容は思い出せるのにな………

不幸な少女の夢
病気で大切な人と離れてしまう夢
それ以外は覚えてないけど

「あれ?まだ寝てる?」
流石に2回も無視するのは可哀想だな
「おはよ、起きてるよ」
「うん!おはよ!」
元気だなぁ

だけど俺の頭の中は不安でいっぱいだった
何故か夢は夢だと割り切れないような不安
いつかは現実で起こってしまいそうな不安

夢だと高校2年生が舞台だった
もし夢が正夢だったらあと一年後に
喧嘩するんだっけ?
それは、彼女が彼氏を傷つけたくないと
いう気持ちから



_______________俺は嫌だな



大事な人に何かを隠されたら悲しい
まるで信用されてないみたいに


「なぁ、なにか不安なこととかあったら
なんでも頼れよ」
思わず口にしてしまう
俺はこんな事言う人間じゃないから彼女も
驚いている
だけどいつもの柔らかく、優しい笑みで
返してくれる
「ありがとう でも急にどうしたの?」

「いや、何でもないよ」

「?」

俺は彼女と一緒にいたい
どんな試練が待ち受けていようと、
どんな不幸が降りかかろうと、
絶対に守ってやりたい



それだけ大切な存在だから





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