嘘は取り消せない
何しようかな………
「あ、アルバム」
私が病院にいた時の家族写真を
取っておいてあるって言ってた

「湊とかの昔の写真が見れるんだ」

なんかワクワクするなぁ

リビングの棚の奥にあるアルバムを開く
後ろからめくってみると最近と変わらない皆
ここら辺はまだ一年前だもんね

「あ、付箋が貼ってある」

写真の横に付箋があった

『桜が治ったらここへ行く』
『桜とよく来たところ』
『神社 桜が良くなりますように』

他にもいろんなことが書いてあった
なんか嬉しいな
すごく暖かい

それから夢中になって読んでいた

パラ、パラ────
パラ、パラ、パラ──────
パラ、パラ、パ──

一瞬で動きが止まる

そのページに写っていたのは
三年前、家族と蛍、6人で出かけた時の写真
『蛍君とお出かけ すごく桜のこと好きみたい』
修学旅行で送った蛍との写真
『2人とも楽しそう』
家でのクリスマス会
『来年からケーキは6人分買わなくちゃ』
蛍が初めて家に来た日
『桜の大切な人 幸せになって欲しい』

お母さんもお父さんもみんな蛍のことを大事に
思ってたんだ
今は蛍なんて呼べる立場じゃないけど……

「………うぅ」
我慢しろ、泣きたいのは私なんかじゃない
お父さんもお母さんもお兄ちゃんも湊も
みんな蛍を家族同然に接してた

「ごめん、ごめんなさい」

誰に謝罪しているのかもわからない
なんで涙が出るかもわからない



ただ、今はただ人の温もりを感じたい
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