嘘は取り消せない
「ねぇ、お母さん、なんで、
そっち側にいるの?」
「お父さん、なんで、そんな目で見るの?」
「私は、何も悪いことしてないよ」

「菜奈穂、目を覚ましなさい
自分が何をしようとしていたのか、
何をしたのか反省しなさい」
「私達は待っててあげるから」

きっと両親は、警察に突き出すつもりだろう
それだけの事をしたから…………

「え、なんで、分からないよ」
「私が倉科さんを殺そうとしたことに
怒ってるの?」
「私がお父さんたちが望んだ子のように
ならなかった事?」
「別に倉科さんが死んでも何も無いじゃん」
「お父さん言ってたでしょ」
「一日に平均は約150,000人くらい
死んでるんだって」
「その150,000人のうちのたったの
ひとりじゃん」

秋月は黙っている
俺も口を挟まない
これは立花家の問題だから
何も口を挟めることなどないのだから

「分からなくてもいい
いつか理解できるのなら」
立花先生が立花さんを連れていく
「九ノ瀬さん、秋月さん、
うちの娘がすみませんでした」
深く頭を下げて病室から出ていく3人
立花さんは頭が混乱しているらしく
全然話についていけずに呆然としている


「立花さん!」
俺は立花さんを止める
「妹さんの件はすみませんでした」
「だけど、俺は助けたこと後悔してません」
「助けなかったら自分のことを
きっと許せないと思うから」
「だから、何があっても助けたと思います」
ずっと言いたかった言葉
俺が俺であるために、立花さんの妹を助ける
多分何度繰り返しても

立花さんは言葉に反応しない
聞こえてるのかも分からない
だけどきっと伝わったはずだ

「九ノ瀬、ありがと」
「え、何がだ?」
「信じてくれて」
秋月からの言葉

_______________桜が悪いやつなんて好きに なるはずなんてないだろ
桜はお前を信じてる、だったら俺もお前を
信じる 簡単だろ?

「別に……俺は疑うことより信じる方が
好きだからな」
どんな人でも疑ってたら凄くつまらないから
誰だって、楽しい方が好きだと思う
疑うのは楽しくない
信じるのは難しいけど、疑うことよりも
簡単だと思う

きっと、倉科さんがこういう考え方を
する人だから、その考えが移っちゃった
のかもしれない

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