ミステリアスなユージーン
きちんと物事を見極め、しっかりと自分の意思を相手に告げる、芯の通った女性だったのだ。

「麗亜……」

麗亜さんが、笑い泣きの表情で課長を見上げている。

「和哉さん、私は努力します。あなたにいつか愛されるように。だから……私を見てくれませんか?」

その時、誰かが私の肩を掴んだ。

「菜月」

すぐに佐渡君だと分かった。

「佐渡君……」

黒い瞳が私を捉え、ホッとしたように優しくなる。

その眼差しに安心して、私の全身から力が抜けた。

見つめ合う私達の傍で、麗亜さんがそっと課長の手を取った。

「和哉さん、帰りましょう。……菜月さん、失礼します」

課長は私と佐渡君を少しだけ見た後、麗亜さんと車道の端に停車してあった車へと姿を消した。

……課長……。

……どう表現したらいいか分からないけど……課長が幸せになったら……いいな。

だって、麗亜さんは素敵な人だもの。

「菜月さん、大丈夫ですか?」

「……え?」
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