ミステリアスなユージーン
私の脳裏に新田麗亜さんの可愛らしい顔が蘇った。

……先日、二十歳になったんだ……。

二十歳の誕生日に、彼女は課長からネックレスをプレゼントされて……。

もしかして、婚約指輪も?やだ私、肝心なところ見落としてるじゃん。

あの彼女の白くて細い指に指輪はあったのだろうか。

……思い出せない。思い出せない!

待って、今からあの二人はどうするの?

二十歳を過ぎた彼女と課長は……二人でお酒でも飲むのだろうか。

それとも……二人で……。

グッと胸を踏まれたような圧迫感に襲われて、私は咄嗟に口を開けて息を吸い込んだ。

やだ、なにこれ、苦しい。

苦痛に眉を寄せて俯いた私の視界に、突然ネイビーの靴先が現れた。

「岩本さん、カラオケ行きましょう」

顔を上げると、私を見つめてニコニコと笑う安藤君と眼が合う。

「俺、岩本さんの歌、聴きたいです」

その瞳には一筋の甘さが浮かんでいて、私は思わず彼を見つめた。

「安藤……君……」

少し掠れた私の声に、安藤君は僅かに唇を開いた。

それから一旦照れたように視線を反らし、再び私を真剣に見つめる。

「行きましょう、カラオケ。その後……僕に送らせて下さい」
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