ミステリアスなユージーン
「えっと……お米ある?」

「……はい」

お米があるなら決まりだな。

私は冷蔵庫のドアを閉めながら佐渡君に続けた。

「じゃあ、お粥でいい?」

「……嫌です」

……へっ?

こういう場合って……漫画やドラマじゃ大抵お粥……だと思いますけど。

想定外の答えに思わず面食らい、反射的に振り返ると私は佐渡君を見上げた。

「嫌なの?じゃあ、何がい、」

「菜月さん」

は?

「……菜月さんが食べたい」

そう言った佐渡君は真顔だった。

結んだ彼の唇が、何か言いそうに微かに開く。

トクンと、私の鼓動がひとつ跳ねた。

「佐渡君……大丈夫?」

彼は返事を返さなかった。

そんな彼の腕が、身体の前でゆっくりと交差した。

その手が、シャツを掴む。

私の真正面で、何の躊躇いもなく彼が白いシャツをまくり上げた。

「あ、の、」

言葉が出なかった。

佐渡君の瞳が、私を見つめて甘く光ったから。

筋肉のついた男らしい上半身が露になり、私の喉がコクンと鳴った。

広い肩幅、筋肉の張った逞しい腕。

心臓が爆発する勢いで血液を送り出し、しかもそれが顔だけに集中するような感覚に微かな目眩を感じる。

シャツが佐渡君の手から滑り落ちた途端、彼はゆっくりと私に一歩近付いて僅かに顔を傾けた。
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