ミステリアスなユージーン
「菜月さん」

キュッと、胸が鳴る。

艶やかな低い声と、貴石のような美しい瞳に。

でも、だけど。

私、もう佐渡君とは……寝ない。

あの日……二度目のあの日、私は自分の犯した過ちに後悔した。

あの夜、私は佐渡君と寝るべきではなかったのだ。

好きだとハッキリ分かった後だったから。

だからきっと、課長の時みたいには割り切れない。

割り切れないなら、いつかもっと辛くなる。

課長との時だって色んな思いが重なり、涙が出たくらいだ。

心から好きになってしまった佐渡君なら、多分耐えられない。

目まぐるしく考えている私の腕を、佐渡君がそっと引いた。

「……ちょっと佐渡君、待って、」

「……待てません」

ふわりと逞しい身体が私と密着して、彼の腕が腰に回った。

「あのさ、熱があるんだから寝てないと。ね?私、何か作ったらすぐ帰るから」
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