キミは甘のじゃく

「眞琴、あなたも女性をいつまでも立たせたままにしておくつもりなの?」

(ま……こと……?)

男性の母親がその名前を口にすると、頭の中でチリッと火花のようなものが走った。

“古賀眞琴”

右目尻の黒子。嫌味な口調。

ぺらぺらと良く回る舌。

私をからかう度に半月に歪む薄い唇。

“ブス”

記憶の中にぼんやりと浮かぶ……微かな面影と目の前の男性がピタリと一致した。

「古……賀くん……?」

私は思わず口元を手で押さえた。

そうでもしないと今にも叫び出してしまいそうだった。

「気がつかないなんて、相変わらず鈍くさいんだな」

私だけに聞こえるよう小さく囁くと、古賀くんは既に話に花を咲かせている母親達の輪の中に身を投じていった。

ポツンとひとり取り残された私の脳内に、驚き、後悔などの様々な感情が駆け巡り、膝がガクガクと震え始めた。

……まさか、お見合いの相手が古賀くんだったなんて!!

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