キミは甘のじゃく

「はじめまして。“青山さくら“です……!!」

「……“はじめまして”?」

……頭上から降ってきた声色は不遜極まりなかった。

顔を上げ男性の顔を窺うと、思い切り眉を顰められる。

私の挨拶のどこがそんなにおかしかったのだというのだ?

「何の冗談だ?」

追い打ちをかけるようにふんっと鼻で笑われ、私は口をあんぐりと開け放ってしまった。

(そっちこそ!!何の冗談よ……?)

初対面だというのに、この愛想の悪さ。

……ただ事ではない。

「あらあら。さくら?いつまでも見惚れていないでこちらに座りなさいな」

お母さんはいつまでも男性の顔ばかり見ていた私を揶揄するようにして着席を勧めた。

「み、見惚れてなんて……っ!!」

図星をつかれたような気がして、かあっと頬が熱くなる。

仕立ての良い上等なスーツに包まれた逞しい体躯。知的な雰囲気を醸し出す眼鏡。癖のある長髪を後ろに流した彫りの深い顔立ちは少しだけ冷たい印象を漂わせていて……。

確かに、ちょびっとだけカッコいいかも?とか思ったけども!!

それも鼻で笑われるまでの話だ。

初対面だというのに、不機嫌そのものという態度を隠しもしない男性なんていくらカッコよくても印象は最悪だ。

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