銃刀法がなくなった!
あれから一ヶ月後───
みのるは、銃を持ち研究所に向かった。今みのるが持っている銃は、この間の大会で折れてしまったスナイパーライフルだった。しかし、今は元通りである。それは、HP研究所の人達が高度な技術で直してくれたからだ。大会優勝後、テレビや取材で「HPにはすごく興味がありますね。」と発言し、それがHP開発者の耳に入ったのがきっかけで、今ではHPを研究している研究所の一員である。みのるの仕事は主にHPの効果を試すためのスナイパー役で、ターゲット役の心臓を貫くことを目的としている。機械でも可能かと思われたスナイパー役だが、細かな微調整ができないという問題点があったため、みのるが選ばれたのだった。HPの効果を試す実験というのは、研究員達が更に改良を進めているHPに問題が無いかや、傷の修復に掛かる時間を測定するために行うものである。ターゲット役は命を落とす可能性もあるため、それに見合う十分な給料を得ることができる。みのるが初めて研究所を訪れたのは、大会から十日後のことだった。白衣の男性に声を掛けられ一瞬戸惑ったが、HPの話を聞かされ、興味本位で行ってみたのが始まりだった。それからみのるは毎日のように研究所へ行き、実験に協力している。二十日後には、優勝賞金の百万円をハッピー・ライフに寄付し、更なる向上に努めた。少しずつではあるが、みのるのHP知識も増え、今では実験のみならず、研究の会議にも出席するほどになっている。

***

(今日も頑張らないと!)
みのるの目の前に建つ見慣れた研究所の看板には大きく『ハッピー・ライフ研究施設』と書かれている。中に入ろうとしたとき、隣から声を掛けられた。
「やあ、今日も来てくれたんだね。」
ヒゲの生えた男性は白衣をまとい、いかにも研究員という感じだ。彼は、日本のHP研究施設の上層幹部らしい。名前は工藤 政義、優しそうな笑みが特徴である。工藤はみのるを研究施設に迎え入れてくれた内の一人で、今では何かとお世話になっている。
「ここに来るのが楽しみで……!この間工藤さんが言っていた研究の進み具合はどうですか?HPで病気も直すっていう……。」
工藤は苦笑いをして、
「まだまだだねー。」
と言った。HPの限界を広げるのが研究所の主な役割である。しかし、試す実験全てが上手くいくことは無く、大きくニュースにはなったりしないが、死亡者も出ているのが事実である。このことをみのるは事前に告げられていたが、研究施設を抜けることは無かった。

中に入ると、今日もいつもと同じように白衣の人々が忙しく働いていた。みのるはいつもと同じように備え付けのロッカーに着くと、安全のため防弾チョッキを着用しスナイパーライフルを手に持った。HPがあるとはいえ、研究施設には色々な物質が舞っているため、HPの効果が消えてしまう可能性もあるのだ。

今日のターゲット役は、みのると同じ新人だった。年齢も同じくらいの、少年だった。
「よ、よろしくお願いします。」
焦っている少年にみのるは、不覚にも少しキュンとしてしまう。
「よろしくね。死ぬわけじゃないし、恐がらなくて大丈夫だよ。」
精一杯に優しい態度をとったつもりだったが、作り笑いが苦手なため、少年は相変わらずビクビクしていた。
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