心ときみの物語

***


「エニシさま。お団子食べます?」

土曜の昼下がり。

俺が横になってお笑い番組を見ているとガラッと拝殿の扉が開いた。そこにいたのは小鞠。

手には透明のパックに入ったみたらし団子が2本。


「どっからパクってきやがった?」

「失礼ですね!貰ったんですよ!」

小鞠は口を膨らませて急須(きゅうす)にお湯を入れる。


「意外と私のファンの方って多いんですよ?だからこうしてお団子もお裾分けしてくれたわけですし?」

「動物保護的な意味じゃね?……あ!」

俺がそう言うと小鞠はわざと団子を2本口に入れやがった。案の定口の中はパンパンでまるでエサを詰めこんだリスのようだ。


「エニシさまにはあげません!べー」

……くそ。たまにこいつ俺のこと見下してんだよな。そろそろしつけし直すか。

それに手鏡なんて持ち歩いて前髪のチェックとかしてるし。そんなのどこで覚えたんだよって感じ。


「でもお茶ぐらい出してあげますね」

小鞠はお茶を湯飲みに注いだ。


最初は畳しか敷いてなかったこの空間も今はテレビにテーブルに茶菓子セット。どこからどう見ても立派な部屋だ。

「お父さまとお母さまにバレるのも時間の問題ですね」なんて、小鞠は他人ごとのように言ってるけど。

バレねーよ。むしろこんな湿気だらけの忘れられた拝殿に誰もこねーよ。


「うわあっ!」

と、その時。外から人の声が。
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