心ときみの物語


扉を開けるとなぜかひとりの男が地面にうつ伏せになっていた。しかも「眼鏡、眼鏡……」と両手で砂利を擦っている。 

お前はどこのドジっ子図書委員だよ。


「眼鏡、そこの右」

俺が言うと男はやっと眼鏡を掴んで顔にかけた。


「すいません。ありがとうございます」

腰が低くて頼りなさそうなヤツだ。でも迷い混んでここに来たわけじゃないと俺は知っている。


「お前、田崎淳平か?」

「え?どうして僕のことを……」

田崎淳平の後ろの掛け所にはひとつの絵馬。

普通と違うのはそれが黒いってこと。

それに名前を書くと俺に届くようになっている。いや、正確には伝わってくる。これで俺がこいつの願いを叶えると約束すれば俺たちの間に縁が生まれる。


「もしかして……あなたがエニシさまですか?」

ああ、今日はお笑い番組を1日中見てゴロゴロとする予定だったのに。
 
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