心ときみの物語


***

雪が降り積もって二日目の朝がきた。

灰のようにこんこんと降り続ける雪は高嶺神社を銀世界に変えて、歩くたびにギュッギュッと音を鳴らす。


「あ!雪だるまですよ!可愛いですね」

誰かが作った雪だるまが境内で仲良く並んでいた。小鞠はまるで子どものように走り回っていて、俺は寒さに肩を縮めた。


どうやらこんなに雪が続いているのは観測史上32年ぶりだと今朝のニュースで言っていた。そのぐらい雪国でもないこの街に雪が降るのは珍しい。

雨は神様の涙、台風は神様のくしゃみ。
じゃあ、雪はなんだっけ?

そんなことを考えながら俺はポケットから小銭を出して、チャリンとそれを箱の中へ。


「あれ?エニシさまがおみくじなんて珍しい。
私もやりたいです!」

巫女の格好をしてるくせにそんなに挙手を強調されても……と思いつつも小鞠の分の100円もチャリン。

俺はスッと箱の中から1枚を引いて、小鞠がカラカラと混ぜたあと奥のほうから手を抜いた。


「わーい。大吉だ。エニシさまは?」

「………」

自分の行く末なんて人に委ねるものじゃない。
だけどその道しるべをおみくじという形で頼ってしまうのが人の弱さだ。
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