心ときみの物語
「小吉ですか。良くもなく悪くもなく、普通ですね」
小鞠が勝手に俺の紙を覗く。
「普通が一番だろ。大吉なんてそんなもの引いたらあとは落ちる一方だぜ」
「自分が引けなかったからって」
小鞠はおみくじを懐(ふところ)に満足そうに閉まったあと、また雪で遊びはじめた。
その様子を見ながら俺はもう一度、おみくじを見る。
――〝待ち人おとづれなくくる〟
待ち人は前触れなく突然やって来る……か。
たしかに突然だった。この降り止まない雪のように。
「そういえばエニシさまって……」
小鞠の雪遊びが終わって、耳も手も真っ赤になりながら古びた本殿までの階段を上っている途中でそれもまた前触れもなく。
「ご自身の縁は切れないんですか?」
「あん?」
思わず眉間にシワが寄る。
「ほら、エニシさまにもどうしても許せない相手や恨み辛み。呪いをかけたいほどの相手とかいるでしょ?」
「いや、俺そんな荒んだ人生じゃねーし。
え、つーかお前いんの?こわ」
「もう!話を反らさないでください!エニシさまが切りたい縁を自分で切ることができるのかって話ですよ!」
小鞠がムスッと口を尖らせた。