冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
「ーーーっ・・」

あごを掴まれて、息が止まる。

「ん・・っ・・」

結局、抗うことなどできはしないのだ。彼の思うままにされるだけ。
くちびるが重ねられ、凶暴なまでの力でこじ開けられ、熱い舌が絡むと、息苦しさと屈辱に涙がこぼれた。


そう長い時間ではなかった、はずだ。
未練など感じさせず、ふっと舌が抜けくちびるが離れる。

「こじ開けられたのは初めて、だろ?」

ふんと、クラウスはフロイラを離し、顔を窓の外へと向ける。


近づいたかと思うと、突き放される。
どんな形であってもーーそれこそ以前クラウスが口にしたように妹のようにでもーー彼に愛されたいと、そして彼を愛したいと望むようになっていたのだと、思い知らされる。

その報いが、愛情も優しさもひとかけらもない、強引なくちづけだ。

フロイラは座席のすみで、声を殺して涙を流した。
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