冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
すぐ前に立ったクラウスに、両の二の腕を掴まれる。強い力だ。
このまま捩じ上げられたら、たやすく肩が外れるだろう。

彼の瞳には、冷たい焔が燃えている。

「ーーーお前は俺のものだ」

「わたしは・・・」

侯爵の籠の鳥、というリアネルの言葉が頭をよぎる。
自分はクラウスに飼われる愛玩動物(ペット)にすぎない。気まぐれに餌を与えるも、いたぶるも彼の自由。
だから、そこから逃げることは許さないと、そういうことか。


「生きるも死ぬも、俺の手の中だ。誰にも渡さない」


もう言葉は出てこない。
今の今まで我が身の立場を自覚できなかった愚かしさに、頬をつたうものがある。
それが冷え、乾くまで、閉じ込められていたのは、クラウスの腕の中だった。
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