冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
七歳の夏の季節、フロイラはその療養所に滞在していた。

そして知り合ったのが、近くにある立派なお屋敷に住む少女ルーシャだった。

「後から母やメイドに、ヴィンターハルター家のお嬢様と聞きました。
本来であれば身分違いのわたしにも、とても優しく仲良くしていただいて、姉のように慕っておりました。
その夏以来、会うことはなかったのですが、忘れられなくて・・・」

「それで、ここで死のうとしたのか」
クラウスが言葉を引き取る。

力無くうなずく。

会えるはずなどないのに。
この世界にまだ未練があるならば、それはルーシャに一目会いたいということだった。

人に尋ねて、ヴィンターハルター侯爵家の邸にたどり着いたものの、全容が見渡せないほどの宏壮さに、立場の違いをあらためて思い知らされた。
トボトボと領内の林の小径をたどるうちに、湖のほとりに出た。

せめて近い場所で死にたかった。
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