冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
「あいにくだな、ここの主は俺だけだ。女は一人もいない」

お姉さま・・・

「ーーーそれでお前はこれからどうするつもりだ」
わずかばかり角のとれた口調でクラウスが問う。

「せ、せっかく助けていただいた命ですので、家に戻ります。
・・・親族の言う通り、結婚するのがよいかと」

「嘘が下手だな」

心臓がぎゅっと縮こまる。

「ここを出たらどうせ、今度はそのへんの運河にでも身を投げる心づもりだろう。若い女が、その命を絶とうとしたんだ。生半可な覚悟でないことくらいは分かる」

感情を押し殺したような声だった。それが怒りなのか、それとも別のものかは分からないけれど。

どうしようもない身の置き所のなさを感じながら、一方では思わずにいられない。

どうしてそんなことが分かるのーーー?
侯爵様である方が・・・
< 15 / 273 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop