冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
小柄で物腰こそ穏やかな初老の男性だったが、シワの寄った目の奥に閃く眼光は思いのほか鋭い。
自分はヴィンターハルター家の顧問弁護士であると名乗った。

弁護士さんがなぜ、と思いながら共に馬車に揺られ自分の家に到着した。

そこには誰がどう集めたのか、親族一同が揃っていた。
誰もが訝しさと、不安と、不満をないまぜにしたような表情をめいっぱい顔に浮かべて。

一同にむかって、弁護士である男性は、ラインハート家の抵当権はヴィンターハルター家に移ったこと。
フロイラは行儀見習いのためにヴィンターハルター家に引き取られることになり、結婚の話は白紙である、と事務的に告げた。

「ーーーなにか異議申し立てのある方は、令嬢ではなく私のほうへ願います」
と最後にそう付け加える。

親族たちは、赤くなったり、青くなったり、白くなったり、顔色をめまぐるしく変えていたが、ぐうの音も出ず一人、また一人と立ち去っていった。
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