冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
荷物をまとめるために、この後何人か人手をやります。明日またお迎えの馬車を遣わしますので。と弁護士はフロイラに淡々と告げる。

「それではご機嫌よう、ミス・フロイラ」

聞きたいことは山ほどあったが、この人から答えは引き出せないだろうと、それぐらいの察しはついた。
彼は命じられたことを、あくまでも実務的に有能に処理しただけだ。

命じたのはーーークラウス・ヴィンターハルター。

抵当権がヴィンターハルター家に移ったということは、自分は彼に債務を負ったということなのか。


なぜ彼は、赤の他人である自分の人生に関わってくるのかーーー
自分はこれからどうなるのかーーー

出会って、というか湖から引き上げられてからこのかた、頭の中をぐるぐる巡り、そして答えの見えない問いかけだった。
< 19 / 273 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop