冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
「黒と赤なんて、クラウス様にぴったりですね」

「そうだな」
少し笑う。

「馬は人を選ぶ。未熟な乗り手だと侮るからな。最初はこの馬あたりで練習するといい」

「そんなことするんですか」
一人で乗るのがちょっと怖くなる。

「並み足だったのがいきなり跳ねたりしてな。舌を噛んだりするから気をつけろ」

思わず口元に手をあてる。


フロイラ、とあごに手がかけられ上を向かされる。

「ん・・・」

くちびるが柔らかく熱をもったものでおおわれる。互いの口の中で舌がからむと、甘やかな痺れが体を疾った。

かつて彼に感じた怯えはもうない。
なかば陶酔状態で、クラウスの胸に体をあずける。

ブラウンメイが小さく嘶いた。
ひょっとしたらこの雌馬は、自分に嫉妬しているのかもしれない。こんなに素敵な方なのだから。
そんな想像さえしてしまう。
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