冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
「どうして、クラウス様が・・・ルーシャはどこにいるんですか!? お願いです、会わせてください」

血相を変えて取りすがるフロイラとは対照的に、ひどく醒めた表情のクラウスはふいと視線を外す。

頬を指で掻き「フロー、あなたはとても美しいわ。ただそのことに自分で気づいていないだけなのよ」と言った。

抑揚は完全に棒読みだ。だがその台詞、その言い回し。

思考も身体も完全に凍りつく。
クラウスの指がフロイラのひたいを軽くつつく。

「いいかげん気づけ」
呆れたようなため息まじりに、つぶやく。

「あれは、俺だ」

!%$・・?〓〆♭φ※=・・・ーーー


へなへなと崩れ落ちそうになるところを、抱きとめられた腕の中で、アルファベットを目にしたときの違和感の正体にようやく気づく。
LUCAS(ルーシャ)とCLAUS(クラウス)はアナグラムだという単純な事実に。
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