冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
「お袖まできっちり詰めますと、女学生っぽくなってしまいますが・・・」

仕立て屋がデッサンをクラウスに見せている。

「ならば袖はレースを重ねたアンガシャントスリーブに」

「それはようございます。華やかさも出ます」

「スカートはペティコートでふくらませて、トレイン(引き裾)をつけてくれ」

意外なほどクラウスは女性の衣装に詳しく、指示は細かく具体的だった。思いもよらない彼の一面だ。

日頃クラウスは身につけるものにかなり無頓着だ。ボタンが取れかけていても、気づかないのか気にならないのか、そのままにしている。
リュカが見つけては、衣装係に修理を命じている。


ドレスのデザインが固まり、仮縫いの段取りもついたところで、仕立て屋の一行は辞していった。

「衣装のめども立ったわけだが、あとは礼儀作法とダンスだな」

「はい」
新たな緊張に胃がきゅっと縮まる。
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