お見合い相手は冷血上司!?
 両手で顔を覆うと、クスリと笑う声がして、私は優しく引かれた腕に抱きとめられた。

「離してください」

 今自分がどんな顔をしているのか分からなくて、覆う手のひらを離すことが出来ない。

「嫌だ」

「お願いです、課長」

「嫌だ」

 まるでイタズラをしている子供のように、時折笑みを漏らしながらその腕で私を包む彼は、私の頭に、コツン、と自身の頭を預けた。

「好きなだけ甘えろ。お前は、何もかも言わなすぎる。あれがしたい、これがしたい、そばにいたい、俺には、全部言え。聞けない願いなどない」

 窮屈なほどに締め付けられる胸が息苦しくて逃げ出してしまいたくなるのに、この優しい熱に寄りかかりたくなってしまう。
 甘えてはいけないとわかっていても、冷たい身体が温まるように、ジンと広がる熱が、私の心を溶かしていくようで。

「逃げられるもんなら、逃げてみろ」

 甘い囁きに目を固く閉じた私は、震える手で、彼の胸のシャツをそっと握り締めた。
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