お見合い相手は冷血上司!?
「着替えてくるから、どこでも好きに座っていろ」
バタン、とドアが閉められる音がして、広いリビングの入口に立っていた私は、緊張で身体が金縛りのように固まってしまう。
会社から車で十五分ほどのところにある高層マンション。
車が停められた時は、驚いて先が闇夜に溶ける建物を見上げたけれど、「早く来い」と足早に中へ入る課長に慌ててついて入った。
……エレベーターの中にまで絨毯が敷いてあるなんて。思わず乗るのを躊躇ってしまった。
部屋の中は全て白と黒で統一されていて、余計なものはなく、あまり生活感がない。
なんというか課長らしいと言えばそうだけれど、モデルハウスのようで落ち着かなかった。
ふっと息をつくと、帰りに寄ってもらったスーパーの袋の存在を思い出し、慌てて袋から氷を取り出してそれを同じく買ってきた氷枕に流し込む。
あとで、お水を借りよう。
「……好きに座れとは言ったが、どこに座ってるんだお前は」
呆れたような声が降ってきて顔を上げると、濃紺のバンドカラーシャツに黒のロングパンツを履いた課長が、私を見下ろしていた。